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映画「夢」の美しさ

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1枚めの花は、近くの公園の緋寒桜

このところBSの映画にはまっている。
録画しておいた「夢」
笠智衆やいかりや長介など、とうに亡くなった名優が出ているから、そうとう古い日本映画ですね。
『こんな夢を見た』と異なる短いお話を10編ほどつないでいる。
部分的には見たように思うが、通しで観ると感慨深い。

行ってはいけないと禁じられた天気雨の森で、狐の嫁入り行列を見てしまう少年

桃源郷に遊ぶ平安の貴族の舞、見惚れて気づけば切り倒された切り株の並ぶ堤、美しい幼女のぽっくり下駄の音に駆け寄れば、1本の幼木に桃の花が咲いている。

ゴッホの絵の中に迷い込んで、マーティン スコセッシ監督が演じるゴッホに出逢う画学生

真っ暗なトンネルを抜けて、全滅した部下の軍隊に出会う隊長は、ただ一人の生き残り
「お前達は死んだのだ、回れ右!」トンネルに消えて行く軍靴の響き

放射能に色を付ける技術が進んだ為に、赤や緑の空気に追い詰められて逃げ場をなくし、海に飛び込むしか術のない人たち
『私達は生きたけど、この子たちは?」と叫ぶ母親

放射能に侵されて異形の花が咲く野原で、元は人だったという一本角の鬼に出会う青年
死ぬこともならず、3本4本と生えて来る角の痛みにのたうちまわる鬼達の地獄

写真は最後の物語
自然と共に暮らす素朴な美しい村に迷い込んだ青年が、水車を治す102歳の老人笠智衆に出会う。
楽隊や踊り手に囲まれ、村中に送られる賑やかな葬列。
『死は怖いものではなく、よく生きて来てご苦労さんと祝われる祭りなのだ』と老人は云う。
赤い胴着に着替えた老人は、『亡くなったのはワシの初恋の人で、ワシを振ってよその男に嫁に行った』ハッハッハッと笑う。
花と鈴を手に、葬列の先頭に立って晴れやかな笑顔で踊る老人。
清らかな水の中にうねる水草の緑が、本当に美しい。
余韻のようにエンドロールが重なる。

懐かしくて怖くて美しい映画だった。

日本映画の美しさは、自分の中に経験値としてある原風景の記憶を呼び覚ます。
それを知っている人がいる間に、残すべきものがある間に、残す事を始めないといけない。
間に合わなくなる時は、もうそこ迄来ていると言われている気がする。

by isozineko | 2017-02-17 12:28 | 日記 | Trackback | Comments(2)

Commented by taro012345 at 2017-02-19 14:02
録画を見てましたか。私も気になる番組の録画はしているのに、ほとんど再生したことがありません。日常、見たい番組もないのに、テレビを点けていることの多いこと、もったいない。これからは録画した番組を見ることにします。
Commented by isozineko at 2017-02-21 09:47
taroさん 私も録画しただけで安心して、再生もしないまま溜まってしまったんです。ブルーレイディスクがいっぱいになって、残すもの消去するものを選ぶ必要があって、見ているのです。
映画と音楽番組が殆どですが、二度三度見ようと思えるものは、案外少ない気がします。