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無い物ねだり

漱石の妻という土曜ドラマ全4回が終わった。
尾野真千子さん演じる鏡子さんが面白くて、毎回楽しみだった。
鏡子さんは悪妻だったと、昔、何かで読んだ。
漱石が気の毒だと思っていた。
お札の漱石も教科書の漱石も穏やかな顔で、人格的にも立派な優しい人だと勝手に思っていた。
あんな気難しい自分勝手な人だったら、私なら一緒に居られない。
それでも鏡子さんは飄々とかわして、物語の最後は夫婦は反目しあいながらも深いところで繋がっている風だった。

仲睦まじげな老夫婦を見かけると、羨ましい気がする。
若い時分は反目し合って、なぜ別れないのか不思議なくらいだった夫婦や、ご亭主の浮気や経済観念のなさで家庭崩壊寸前だった夫婦が、老境になり、孫を連れて平和そうだったりすると、なんだか裏切られたような気がする。
自分ばかり取り残されたようで、佗しい気までする。

とかく人の家庭は良く見える。
今が平和だからと言って、24時間平和なはずはない。
それでも一緒にいる長い時間が、身内の結界のようなものを作り出す。
腐れ縁だの諦めだのと言いながらも、最後はそこへ帰っていくのでしょう?
張り合おうなんて思ってないけど、敵わないよね。
それも、持たない者の幻想だったりするのかしら。

気ままなひとりは、裏を返せば孤独
昔に戻りたいとは思わないのは本当だけど、こころのどこかで、もう手の届かない不自由を羨んでいる。
人の心って、よくよく無い物ねだりだよね。


by isozineko | 2016-10-15 23:11 | Trackback | Comments(2)

Commented by taro012345 at 2016-10-16 16:36
私も観てました。面白かったのと、漱石の別の面が見れて、こんな苦難を抱えながら、幾多の文学青年を育てていたことを知りました。とうぜん、奥さんのご苦労も。今日なら別れていたに違いありません。
Commented by isozineko at 2016-10-16 17:32
面白かったですよね。
いつもなら9時前には寝床に行く母が、この番組だけは起きて見ていました。
漱石の妻は悪妻だったと聞いたことはありませんか?
良妻賢母が理想だと世間も妻たちも信じていたあの時代、夫の言う事を聞かず、自分の意見を持った鏡子さんは、悪妻のレッテルを貼られたのでしょうね。
今なら、女性の多くはまだ手ぬるいと思うでしょうが。