曼珠沙華考

今月の句会の御題は曼珠沙華でした
石垣には同属の黄色いショウキズイセンはあるけど、赤い曼珠沙華は咲きません。
子どものころには野良の畦道や墓地の周辺によく咲いていました。
花は30年ほど前に九州の日田あたりの棚田の土手で見たのが最後です。
緑の中に真っ赤に固まって咲いていて物悲しくてとても美しかったです。
山口百恵のうたで、「まんじゅしゃか」と発音させていましたね。
♪曼珠沙華、恋する女は曼珠沙華罪つくり♪。
まんじゅしゃかはサンスクリット語の発音だそうです。
子どものころは、地面から花茎だけが伸びて毒々しげな真っ赤な花を咲かせるので、
恐ろしげな妖しい花という印象が強かったです。
大人たちからも、絶対に触ってはいけないと言い聞かされていましたし…。

花の写真が欲しくて、ネットで調べたら、まあ、いろいろな情報がありました。
昔は田んぼの土手に植えてその毒気で野鼠やモグラの侵入を防いだとか
墓地に多くあるのも同じ理由みたいです。昔は土葬でしたからね。
そのせいか、死人花とか幽霊花とかいう別名があるそうです。
球根を含め全草に毒がありますが、球根は毒抜きの処理をすれば食べられるそうです。
危険を冒してまで曼珠沙華を食べたなら、相当な飢饉だったのでしょうね。

昔は曼珠沙華の毒を堕胎に使ったこともあるそうですよ。
そんなくらいイメージを覆したのが、北原白秋の「蔓珠沙華」の詩だそうです。
昭和歌謡にも「赤い花なら蔓珠沙華 和蘭陀屋敷に雨が降る…・・」なんて節がありましたね。

 「曼珠沙華」
          北原白秋

ゴンシャン ゴンシャン どこへ行く
赤いお墓の 曼珠沙華(ひがんばな)
今日も手折りに きたわいな

ゴンシャン ゴンシャン 何本か
地には七本 血のように

ちょうどあの児の 歳の数

ゴンシャン ゴンシャン 気をつけな
一つ摘んでも 日は真昼

ゴンシャン ゴンシャン なし泣くろ
いつまで取っても 曼珠沙華
曼珠沙華

恐や赤しや まだ七つ
    *ゴンシャン=良家の娘

この詩の解釈、私なりに…ですが、
ゴンシャンは人知れず恋をして身ごもり、
おなかが目立つようになって格式を重んじる家長の指示で曼珠沙華の毒で堕胎させられた
狂ったゴンシャンは、曼珠沙華を手折りながら死んだ子の歳を数えている
赤ん坊の父親のことは、この詩には影さえ見えません。
女の側だけ責めを課せられる…全然明るいイメージじゃないんですよね。

この詩には白秋の経験も裏打ちされていたんですね。
白秋自身が俊子という人妻と道ならぬ恋をしたことがあったとか。
白秋は俊子さんと別れた後も乳飲み子の悪夢に悩まされたのだそうです。
俊子さんは、乳飲み子を抱えて不倫できるほどに大胆な女性だったのかもしれませんが、
白秋だって相当なお方だと、私には思えます。
「語らふ隙もみどり児は声を立てつつ」という詩の一節があるそうです。
自分の経験を詩にして発表してしまえるんですから…
それって、商売道具でしょ?
赤ん坊のいる女を誘惑しておいて、悪夢に悩まされたぐらいじゃ償えませんよ

でもね、曼珠沙華にはなんの罪もありません
大人になった今の私は、あの花の色と形、それに曼珠沙華の漢字と音の響きになんともいえない悲しみを感じます。
心に秘めた狂うばかりの女の情念の炎を思います。

 報われる恋にはあらじ曼珠沙華   美しいでしょ?

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by isozineko | 2012-09-22 17:03 | 日記 | Trackback | Comments(9)

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Commented by kattyan62 at 2012-09-22 23:18
母は彼岸花と教えてくれまして、大きくなって知った曼珠沙華の文字面と語呂にファンタジックな感じがして好きなんです。女の情念の色かぁ〜 判るような判りたくないような。
北原白秋、名前が大きいけど普通のオッサン?みたいやね。
Commented by isozineko at 2012-09-23 15:48 x
北原白秋ね、ホントに普通のおじさんじゃないかと思いましたね。
男性に彼女がいるのは甲斐性で当たり前の時代だったのですから、そんなものでしょうよ。
今は女房が我慢しなくなっただけで、男の本性が変わったわけではないと思っています。
Commented by にいにい at 2012-09-23 18:41 x
大きな名前の人たちも隣りのオッサンと変わりませんよね。女性から金の切れ目が縁の切れ目とさっさと行っちゃう時代でもありますね。
男も僕の歳になると求めるものが変わりますね。
Commented by taro012345 at 2012-09-24 00:16 x
ゴンシャンって、初めて聞いた言葉です。白秋の故郷のことばでしょうか。
悲しい話に曼珠沙華が似合うんですね。
この詩はまったく知りませんでした。
Commented by isozineko at 2012-09-24 13:20
にいにい、札束をちらつかせてつなぐようでは、金の切れ目が縁の切れ目になるはず。
でも、本気で惚れたら、心の他には何も求めないって人だっているでしょう。
いい年をしてと言われそうだけど、いい年をしたからこそ求めるものは心からの愛情なんですよ。
Commented by isozineko at 2012-09-24 13:30
taroさん:私も知りませんでした。ネットって、便利ですね~。
白秋は俊子さんを心から愛したのでしょうか。
赤ん坊の悪夢にうなされるってことは、俊子さんへの愛情より赤ん坊への罪の意識が大きかったのでしょうね。
旦那さんに知れて、子どもの父親まで疑われる羽目になったかも?
そうなら、昔のことだから俊子さんは子連れで離縁されて難儀したのではないかしら。
俊子さんのその後か気になります。
Commented by kattyan62 at 2012-09-25 17:48
ハハハ 貧しく暮らしていると邪念が消えて行きますよ。
あの日から数年は放蕩しました。あの頃はプレゼントを期待してるって判り興ざめした子も居ましたね。今は無い無い尽くしですから見えてくるものもあります。でもお金は程々にでも必要だと思いますね。 
Commented at 2012-09-25 18:04
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by isozineko at 2012-09-27 19:47
鍵さん:ふ~ん。そうなんや。3年後の私も同じような感じかなあ。
でも下駄箱に…そっちのほうがびっくりしてしまうわあ